境界線の魚

その3 オレンジクロマイド

 今回紹介する魚は、わたしにとって長らく境界線にかすりもしなかった魚です。その名は、オレンジクロマイド。これまで紹介した魚は、どれも魚のほうから私の物欲の境界線に入ってきた感じなのですが、この魚は、名前こそ知ってはいたものの、実物を見たことはありませんでした。熱帯魚の古い書籍では、よく目にするこの魚名。ある意味過去の遺物というか、遠い存在でした。熱帯魚にもはやりすたりがあることは事実ですが、時代が下っても魚の魅力が落ちるわけではありません。とはいえ、流通していなければ、飼いたくても、目にする機会さえないのが現状です。その筆頭格がオレンジクロマイド、ダイヤモンドクロマイドなどの、アジアに分布するマイナーなシクリッドではないでしょうか。
 もし、たまたま行った店先で、そんな魚を見つけたら、誰だって即買いですよね? わたしだけ??
 入れる場所は、後から考えればいいし、・・・・・・なんてことはよくあることで。幸いにもいま、入居者募集中の水槽が一つあったのです。しかもここは、60センチのフラットで、汽水魚のユゴイとあとは雑多なのが少数いるだけで、クロマイドを入れるにはもってこいでした。ただ懸案が2つあって、ひとつはユゴイとクロマイドの相性がわからない。このユゴイはネオンテトラサイズから、のし上がって現在ボス的存在です。文献によると、このクロマイドもそうとう気性が荒いらしい。シクリッドなので当然ですが、サイズから言うと、分が悪い気がしました。(まあ、大丈夫だろう)と大体こんな時は、希望的な観測をするもので、ネックにはならないのでしたが、躊躇したのは、胸びれに白点がついているように見えるので、病魚を買うのはさすがにためらいました。それでこの日は買わないで帰ったのですが、時間をおいて再度行ってみれば、病気かどうかはっきりする、と自分を納得させました。
 例によって、売れてしまったら、それでもいいかと思ったのですが、病魚を買う人は滅多いないでしょうが、ことによると〇んでいる可能性も無きにしも非ずでした。いずれにせよ、この機を逃すと、再び飼うチャンスはないと思ったので、待ち遠しい気持ちで1週間過ごしました。
 さて、1週間後に再び入店すると、真っ先にクロマイドのいた水槽のところへ。
(えっ、いない?!)・・・・・・いや、いました。いましたが、1週間前よりさらに調子が悪いのか、同居魚もいないのに、隅っこのパイプの陰に隠れています。前に出てこないので見づらい。が、明らかに、おでこにも白点がついている。それを見て決断しました。「今なら、治せる」と。

飼ってみて

 いきなり導入することはできませんので、トリートメントタンクをセットして、そこへもう1種の購入した魚(Neo.ブリチャージ)と一緒に収容しました。この時点で、クロマイドには、おでこに1点、左右の胸鰭に23点、尾びれにも複数の白点が確認されました。なので、薬の投下はもちろんのこと、水温も日に12度くらいずつ高めながら、高水温でじっくりトリートメントしました。白点消失後も時間をかけて温度を下げましたので、導入までにはゆっくり34週間費やしました。この間の心持は、早く本水槽に入れたいという思いはありますが、焦ってはいけない(在来魚に伝染ったら元も子もない)ので、ひたすら辛抱ですね。よくよく考えてみると、新しい魚を買って、わくわくした気分が最高潮に達するのは、放流する前後で異論はないと思いますが、そこからは興味は下降線になりやすいんです。飽きるのとはまた違うんですけど。ただ、クライマックスは終わった感がありますよね。すると新しい変化を求めたくなるのも・・・・・・ありがちではないですか?
 放流が先送りされている間は、わくわく感が持続しているのに気づきました(多少波はあるけど)。治療中の気分も存外悪くなかったです。もし死んだらあれなので、病魚を買うのも乙なもんだなんて言えた口ではないですが、新しい魚を買おうとは、今のところ思っていません。
 導入の様子は、こちら💛

 動画の結びに三日天下とありますが、やはりユゴイが強かったです。ここまでこぎつけて、クロマイドを失いたくなかったので、ユゴイは移動させました。そして今、ここで一番幅を利かせているのは誰だと思いますか?  実は、一緒に買ったブリチャージなんです。でも、概ね平和です。

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